
まずテーマ(キーワード)をつかむ
登場人物、曜日、数字をチェック
段落ごとにメモをとれ
いよいよキーポイント最後の項目となる長文読解である。長文の問題はいわば君がこれまで養ってきた知識を総動員して立ち向かわなければならない分野で、本当の意味での学習の総まとめになる。それだけに長文を目の前にしただけでアレルギーを起こして目の前が真っ暗になってしまう受験生が多いことだろう。しかし、一見取りかかりにくく思われてしまう長文読解にも理解のためのコツがちゃんとある。それを僕と一緒にしっかりと学んでいこう。
まず君が理解することは、長文には必ず『テーマ』があるということだ。もし『テーマ』がなければ、互いに関係のない文章が脈絡なくつながってしまい、読んでいて何が何だかさっぱりわからなくなってしまう。入試によく出題される文章のテーマとしては、旅行・友達・学校生活・物語が多い。東洋思想・相対性理論・アメリカにおける人権問題・株問題など僕は一度も高校入試に出題されたのを見たことがない。ということは日本語に訳せば小学校2〜3年生程度の内容が問われるのである。だから君にとって『テーマ』の把握は少しも難しくはないと僕は断言できる。
そして小学校低学年の子供たちにでも理解できるテーマに登場人物がからんでストーリーが展開していく。つまり長文読解のカラクリを示せば今まで説明したことがすべてとなってしまうのだ。したがって長文読解は今まで君たちが考えていたよりもずっと単純で簡単なものだということがわかる。だから長文読解アレルギーの受験生は、1)テーマ(キーワード)を把握するのがヘタ 2)登場人物を把握するのがヘタ 3)話の展開(ストーリー)を追うのがヘタ のいずれかということになる。単にそれだけのことだ。
僕はこれまで受験英語を不得意と思いこんでいる多くの中学生諸君に接してきたが、いろいろと試した学習法の中で一番効果のあったものを君に教えよう。まず長文を目の前にしたら、一つ一つの単語の意味や文の解釈に気を取られず、ざっと文の初めから終わりまで一気に目を通してみる。(通読という。)そしてその時には、文中に何度のあらわれる単語(キーワード)や登場人物(複数いればその関係)をチェックしてみればよい。こうすればその長文のテーマが見えてくる。(キーワードや登場人物の単語の下にアンダーラインをつけてみるのも一つの方法だろう。)第一回目の通読では「この長文はだいたいこんなテーマで、こんな登場人物がいる。」くらいの理解ができれば合格だ。これなら君にもできるだろう。
次が大切。ニ度目の読解では詳しく内容を把握していく。(精読という。)ここでのポイントは段落ごとの内容を簡潔に、かつ正確にまとめたメモを残すことである。ところで君は「段落」の意味がわかるだろうか? 長文の文章の一番はじめの単語は次の行の先頭の単語よりも少し引っ込んでいるはずだ。そしてさらによく見ると、全体の文章の中でそのような行が数カ所あるはずだ。その先頭の引っ込んでいる文から次に先頭が引っ込んでいる行の直前までの文のまとまり(かたまり)を段落(パラグラフ)と呼ぶ。この段落を一つのまとまりと考えて、そこに書かれている内容を「メモ」に残すのだ。その際、特に注意することは「登場人物」と「曜日や数字」である。まず登場人物がどのような人か? そしてその人が何をしたか? 複数の登場人物がいればその人間関係はどうか? さらに曜日は? 日付けや年数は? と精読のさいにチェックしながらメモしていくと面白いように内容が頭に入る。そして「なんだ、小学校の低学年の子供にも理解できるじゃん。」ということになるのだ。これで読解は終了する。
もし君たちの中で「長文読解とは出てくる一つ一つの文を日本語に訳す作業だ。」と思っている人がいるとしたら、それは決定的に間違った認識だ。例えば新聞の記事。あれは読んで内容の要点がわかることが大切で、一つ一つの文章(表現の仕方など)については一向に気にとめないはずだ。君の大好きなアイドルが恋人を作った、なんて週刊誌で見ればその相手が誰なのか、そしてその相手とどの程度の付き合いかさえわかればいいわけでしょう。(ちょっと極端な例かなあ?) この場合もそのページにのっている一つ一つの文にいちいち君はこだわらないはず。なのに英語の長文読解、しかも小学校2〜3年生でも十分に理解できる内容の文一つ一つに真剣になってこだわっている君たちの姿が僕には実に面白い。
くどくなるがもう一度言おう。最初の通読では全体のテーマ(あるいはキーワード)や登場人物を把握する。次の精読では段落ごとにメモを残す。このとき登場人物の人間関係や曜日、日付けに注意しよう。長文読解のコツはこの二点に尽きる。
では実際の長文問題を用いて僕と一緒に考えよう。先ほど言い忘れたが、よく文章の下に書いてある単語や語句の『注)』は先に読んでおこう。念のため。それではまず、君の力で上に述べたポイントを実践してみよう。
[問題] 次の文は健治君が書いたものである。これを読んであとの問いに答えよ。
I came from America yesterday. This was my first visit to a foreign country.
When I flew to New York, Mike and his sister Mary came to see me at the airport.
I was very happy when I saw them. We took a bus and then a taxi to their house. I
introduced myself to their parents, Mr. and Mrs. Brown. After lunch, I showed them pictures
of my family.
Next day, Mike and I went out for a walk. Everything was new and interesting to me.
We went to a park. Many people were running there. I saw an old woman among them.
When she finished running, she came to us and we began to talk. She said, " My only son
lives in Japan and my only daughter lives in Australia. I live alone, but I don't usually
have time to feel lonely. I have a lot of things to do."
I think there are many old Americans who live alone and enjoy their lives. Some of
them visit foreign countries, and some enjoy visiting their families, or talking with their
friends. There are some who go to school and study with young people.
At dinner with Mike's family, we talked about the old woman we met in the park. Mr.
Brown said, " We Americans don't usually live with our children when they grow up, because
we want to be independent." Mary said, " You'll become so old that you won't be able to
look after yourselves, then I'll look after you." Mr. Brown said, " Thank you, Mary, but we want
to look after ourselves." I think Mary was a nice girl.
Here in Japan, I live with my grandparents, parents and a young brother. My parents are
still young and they are working hard. We have happy lives.
But when my parents become too old to look after themselves, I'll look after them. I
think this is the same in America.
(注) airport ・・・・空港 take a bus( taxi )・・・・バス(タクシー)に乗る
introduce ・・・・紹介する 〜self(〜selves )・・・・〜自身
alone ・・・・一人で lonely ・・・・さびしい grow up ・・・・大人になる
independent ・・・・自立した look after 〜・・・・〜の世話をする
grandparents ・・・・祖父母
問1 次の1〜8から、本文の内容に合っているものを三つ選び、その番号を答えよ。
1 Kenji visited America with his younger brother by ship.
2 Mike and Mary took a bus, but Kenji took a taxi from the airport.
3 The old woman always feels lonely because she doesn't live with her children.
4 The old woman has two children. One of them lives in Australia.
5 Kenji thinks many Americans living alone know how to enjoy their lives.
6 American people don't want to be independent.
7 Mr. Brown asked Mary to look after him when he becomes old.
8 Kenji's parents are young and working hard.
問2 本文の内容について次の質問に英語で答えよ。
ただし、英文の書き出しは She とすること。
What was the old woman doing when Kenji saw her in the park?
問3 本文中の下線部 this が示す内容を日本語で句読点を含め30字以上60字以内にまとめよ。
どうだろう。君の実力は存分に発揮できたかな? わざと内容の濃い文章を選んでみた。
何度も説明することになるが最初にまずざっと通読すること。そしてその前に文の終わりにある「注)」はキチンと目を通しておこう。
ではキーポイントにそって説明する。最初の通読で君はこの文のテーマ(もっと簡単にいうと一体何が書かれているのか)がつかめただろうか。現代の国際政治の問題? それとも恋愛の問題? いや違いそうだ。文章の冒頭は次のように始まっている。『 I came home from America yesterday. 』この " I " とは明らかに健治のことであり、どうも彼が主人公らしい。その健治が昨日アメリカから帰ってきた、とある。ということはこの文章は健治のアメリカ観光旅行記だろうか? というふうに考えていくわけだ。
それと君が文中によく見る単語はないか? 人物名の他に『 "America(n)" "old woman" "look after" "parents" 』あたりはどうだろう。アメリカ、お年寄りの女性、面倒を見る、両親という単語がよく登場しているようでどうも大切らしい。観光地を思わせる地名はなく(ニューヨークはあるが)どうやら健治のアメリカ観光旅行日記ではなさそうだ。もし君がこの文章のテーマをつかめなくても重要と思われる単語はあらかじめ抜き出しておいてもいいかも知れない。
では次。登場人物を挙げてみよう。健治はこの文の中での主人公である。他には? ブラウン一家(マイクとメアリーとその両親)、公園で出会った年配の女性、最後に話題の上で健治の家族のこともチラッと出てくる。これらの登場人物がストーリーの中でどのようにかかわり合っていくのか2回目の精読で追求していこう。
この文章はいくつの段落(パラグラフ)より成り立っているか君は指摘できるか? もうおわかりだろう。7つの段落がある。では今から一つ一つの段落に対してメモをとっていこう。
第一段落のメモ:僕(健治)は昨日、初めての海外(アメリカ)旅行から帰国。
第二段落のメモ:ニューヨークではマイクとメアリーが空港で出迎え。バスとタクシーを乗り継いで彼らの両親が待つ家へ。まずは自己紹介。
第三段落のメモ:翌日マイクと公園へ散歩。ジョギングしている年配の女性がいた。一人息子は日本にいて、一人娘はオーストラリアにいる。一人暮らしだが、やるべきことが多くさみしくないという。
第四段落のメモ:思うにアメリカの一人暮らしの年配の人たちは、さまざまな過ごし方で生活を楽しんでいるようだ。
第五段落のメモ:ブラウン一家との夕食で例の女性のことが話題になる。ブラウン氏はアメリカでは自立を願うため成人した子供との同居は考えないとのこと。親孝行なメアリーが彼の面倒を見るといったが彼は礼を言って断った。
第六段落のメモ:僕(健治)は三世代で楽しく暮らしている。両親は若いので仕事をしている。
第七段落のメモ:親が年をとったら僕がめんどうを見るだろう。この気持ちはアメリカ(の子供)と同じだ。
「これがメモかっ!」と君に叱られそうだ。でもこれは説明のためにいちいち文章にしているだけなので君はもっと簡潔に書いていいし、時には重要な文にアンダーラインを引くだけでもいいだろう。大切なことは一つ一つの文を訳すことではなく、テーマや登場人物のかかわりなどを段落ごとに「君自身が理解できる形でメモ」していくことである。上記に書いた僕のメモで君はこの文章の流れがバッチリわかったと思う。この文章は主人公である健治が日本とアメリカでの老後の親と子供とのかかわりについて自分の考えを述べている。公園で登場した年配の女性はこの論点を明らかにするためのアクセントになっているわけだ。
では問1。8つの文の中から本文の内容に合っているものを選ぶ。
1 健治は弟と一緒に船で渡米した。
2 空港からマイクとメアリーはバスに、しかし健治はタクシーに乗った。
3 年配の女性は一人暮らしでいつもさみしく思っている。
4 年配の女性には2人の子供がおり、うち一人はオーストラリアにいる。
5 一人暮らしの年配のアメリカ人の多くは人生の楽しみ方を知っていると健治は思う。
6 アメリカ人は自立を望まない。
7 ブラウン氏はメアリーに自分の老後の面倒をお願いした。
8 健治の両親は若く、仕事をしている。
もういちいち説明はいらないだろう。正解は4、5、8の3つである。
次に問2。参考までに質問の文を和訳してみる。『健治が公園で年配の女性を見かけたとき、彼女は何をしていたか?』 簡単である。走っていたわけだから、「 She was running. 」でよい。こういう問題の答えは必ず本文中にある。
最後に問3。下線部のthisが示す内容を説明する。(このことは)アメリカと同じだ、と健治は思ったのである。では何が同じなのか? この「this」は代名詞である。何かの「代用」で使っているわけだから必ず近くにその正体はあるはずだ。直前の文に『だが僕の両親が(年老いて)自分の身のまわりのことができなくなったら、僕がめんどうをみるだろう。』とある。その考えがアメリカと同じなんだと健治は思っているのだ。このことをまとめればよい。解答例としては、『将来両親が年をとって自分たちの身のまわりのことが出来なくなった時に、子供が彼らのめんどうをみるということ。』(53字)
長文読解の練習は君にとって今始まったばかりである。当初はとまどうことも多いと思われるが、地道に練習して一日も早く慣れてほしい。長文読解のキーポイントをもう一度見直しておこう。君は必ず長文問題の苦手意識を克服できる!