みなさんご存じのように、巷(ちまた)には数多くの健康に関する本やテレビ番組が流行しています。いつの時代であっても「健康でありたい」「病気になりたくない」という人々の思いは共通しているでしょうし、また日々のニュースでお馴染みの環境ホルモン、狂牛病、オゾン層破壊、水質汚染や食品品質管理の不安なども重なった結果、特に現代社会は健康への関心がいやが応にも高まる時代といえそうです。加えて生活の欧米化(この言葉も死語になりつつある....。)に伴う心臓病、癌の増加も確実にそのことに拍車をかけていますね。だから健康になるためのノウハウは確かに必要だとは思うんですけど..........。
最近ちょっと気になることがあるんです。内科外来に来られる患者さんの中に安易な民間療法(健康法)に頼り切ってしまっている方をよく見かけるようになりました。これはここ数年の間に起こってきた現象のようです。いわゆる「健康ブーム」が発端でしょうか。一昔前に比べ、日常生活の中で書籍やテレビ番組から健康法に関してたくさんの知識を得ることが容易になっていますね。例えば新聞を見ても「〜は健康によい。」「私は〜を食べてこの病気を克服した。」「ボケない食事」「これを食べて癌を予防しよう。」といったたぐいのテレビ番組を簡単に見つけることができます。その健康ブームの「申し子」ともいうべき方々が確実に外来患者さんの中に増えてきているんです。(「グルメブーム」の後に「健康ブーム」の到来です。なんか笑えますね。)
ここまで読まれてあなたは思うでしょう、『お前は「健康ブーム」に批判的のようだけど、結局みんなが健康になってお前の商売が成り立たなくなるのがイヤなんだろう。』と。実はその通りなんです!(笑) いえいえ、僕は決して「健康になること」「健康になるために努力すること」を否定しているわけではないんです。問題はですね、漠然と「健康になりたい」と思って何でもかんでも無節操に手を出すやり方が多くの人たちの間で流行っているということなんです。(しかも時にその健康法がなかなか持続できていない......。)本当にこれは大問題だと僕は思っているんですよ。話を例えてみます。ちょっと極端な例えになりますが、ある日あなたが自称金儲(もう)けのプロと名乗る人から次のように言われます。『儲(もう)かる話があるよ。必ず金持ちになれるから私の言うことをききなさい。すぐに現金〜十万円準備して。』と。これを聞いてあなたは億万長者になりたいがために話の内容をキチンと吟味せずに単純に信じ込み、お金を渡してしまうことにも似ていますよね。もちろんお金持ちになれるかも知れないけれどリスクが大きそうですよネ。(う〜ん、やっぱりちょっと例えが極端かも......。(^_^;))
こんな話があります。一時期『ココアが身体によい。』という健康法が世間に流れて、ほんのちょっとの間ではありましたがスーパーマーケットの店頭から(僕の大好物の)ココアが姿を消したことがあります。そして時を同じくして外来で糖尿病の治療をしていたある中年の女性の血糖値が急上昇したのであります。おかしいなと思ってよくよく彼女に事情を聞くと最近健康のためにココアを愛飲するようになったとのこと。すると今度は僕の血圧が急上昇しましたよ!(怒) だってそれまでその方の血糖値は安定していましたからね。健康になりたいという気持ちからとはいえ、医者に何の相談もなく独断で始めた健康法が見事に血糖を高くしてしまったのです。
ここで『理想の健康法』について僕の考えを述べてみます。ポイントは3つあります。まず一つめ。健康法を選択するに当たって大切なことは、何はさておきしっかりと自分の身体の弱点を認識することでしょう。身体の弱点を補強するための「健康法」ならば理にかなっています。採血でコレステロール値の正常な人が一生懸命になってコレステロールを下げるための食事をとる必要はないでしょう。漠然と「健康になりたい」ということではなく『弱点補強の目的意識をもって行なう』健康法なら僕は理解できます。要は手さぐり的な健康法はダメということです。もちろん健康のためとはいえ実施前には一応、かかりつけの医者に相談してみてくださいねえ。
2つめ。正しい健康法を『継続』させること。このことはとても大切ですね。逆に言えば、いくら正しいやり方だとしても継続できそうもない健康法では全く役に立ちません。だから健康法は「ブーム」ではイカンのです。一時的に流行(はや)るだけのような健康法はイカサマとまでは言わないけれど僕は信用できない。簡単なことでもキチンと続けられる無理のない健康法をお勧めしたいですなあ。
最後に3つめ。その時々の体調に応じて路線が変更できる「柔軟な健康法」であること。かたくなに信じこんで修正のきかない健康法は時に身体を壊すことがあるのだと知っておいてくださいね。(以前僕の外来に来ていた患者さんがこんなこと言っていました。『そもそも生きていることが一番健康に悪いんだから、窮屈(きゅうくつ)な考えでいくより、おおらかな気持ちで病気の治療に取り組みたいもんだねえ。』と。 何となく名言ですネ。僕は診察室のメモ用紙に思わずこの言葉を書き留めてしまいました。)
ある有名なお昼のテレビ番組が今までに紹介した健康法をすべて数えあげると全部で2万弱もあるそうですよ。あなたは「健康に良いから」といって一日に2万弱の健康を実践できますか? 逆に健康を損ないそうですねえ。(笑)