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今夜の番組チェック

体を張って生きる男たち



 今春から縁あって、地方競輪場の医務室に非常勤で勤務することになりました。選手の体調管理と怪我(傷)の手当てが主な仕事内容です。

 もともと僕は好奇心旺盛なタイプですので、今回、競輪場の舞台裏を覗かせてもらうことになり、非常に楽しく未知の世界を学ばせてもらうことができました。今まで全く興味のなかった競輪をとても身近に感じ、親しみを覚えるようになりましたよ。

 医務室のベテラン看護師さんにいろいろと話を聞くことができました。競技場の構造、運営組織の仕組みから選手たちの健康管理に対する細かい留意点に至るまで、それはもう自分にとって目新しい内容ばかりでしたので面白かったですねえ。伺った話の中で特に印象に残ったこと。競技に出場する選手たちの体調については、関係者以外の外部に情報が絶対に漏れないように厳しい管理がなされていること。(スタッフは携帯電話の持ち込みが原則禁止されている。)競輪の競技場には4つのランクがあり、それぞれで賞金金額に違いがあること。悪天候の際には、出場選手全員に特別手当てがつくこと。などなど。

 さて、医務室にはモニターテレビが備えてあります。レースが始まると実況放送付きで画面にその模様が放映されるわけですが、これは競技中のアクシデントをいち早く知るためのものです。そして競技中に選手が転倒(現場では「落車」といいます。)すると、医務室はにわかに慌ただしくなります。時には複数の選手が担架で運ばれてきますし、競技場関係者や他のスタッフも同時に駆けつけますので、医務室内はごった返しの状態でちょっとしたパニックになります。しかしですねえ、選手たちはタフなんですよ。(もちろんタフじゃないとやってられんでしょうけれど。)スリ傷なんて「怪我」とは思っていないようですよ。先日も落車で左の太ももに大きな擦過傷(スリ傷のことです。)を負って医務室に運ばれてきた選手がいたんですが、僕がさっそく処置をしようと思ったら、「骨は大丈夫みたいだし、シャワー浴びてくるわ。」と言って部屋を出ていきました。怪我のことよりは、むしろ競技を(反則行為を行った結果の)失格になってないだろうかということをしきりに心配していました。

 選手の中には、気の強い人も弱い人もいます。20歳代のルーキーがいると思えば、50歳代のベテランもいます。出身都道府県もさまざまで、しかも全国の競輪場へ飛び回っています。しかしすべての選手に共通するのは、彼ら全員が家族のため、愛する人のために体を張って生きているということでした。そのような姿を目の当たりにして、僕は感動を覚えずにはいられませんでした。ご存知かも知れませんが、競輪選手になるには数々の難関を突破しなければなりません。また選手になれたからといって楽な生活が保証されているわけでもありません。単に競輪が好きだから、という気持ちだけではとても一流にはなれない世界であることがよくわかりました。

 競輪場の医務室勤務で多くの選手と接しているうちに、 体を張って生きる男たちの誇りを感じるようになりました。そのような選手たちが無事にレースに臨めるように、これからも医務室のモニターを通して彼らを見守らせていただこうと思っています。